ワーキングメモリーってどんなもの?
- 石神井公園心理療法室
- 2022年11月7日
- 読了時間: 3分
WAIS(ウェイス)やWISC(ウィスク)といった知能検査では、知能を構成するさまざまな側面についての情報が得られます。その中に、「ワーキングメモリー」というものがあります。
私たちは日常的にワーキングメモリーを使っています。例えば、私たちが人と会話をしているとき、相手が言った言葉を覚えながら、自分が何を話すか考えたりしています。他の場面では、買い物をするときに、これから買わないといけないものを記憶しながら、どこで買おうか考えたりします。今もこの文章の読んだところを記憶しながら、その内容について考えていると思います。私たちは、課題をおこなうとき、必要な情報を一時的に記憶しておかなければなりません。そのような一時的な記憶を、ワーキングメモリーと呼んでいます。ワーキングメモリーは、私たちが情報を取り入れるときに使われており、思考や推理などのより複雑な作業を支えています。
ワーキングメモリーは、このように、『記憶と行動』といった、二重の課題をおこなう際に使われます。いくつかの課題を同時にこなさなければならないときや情報量が多いとき、ワーキングメモリーには負荷がかかります。例えば、ゲームに集中をしている最中に、話しかけられた場合などは、言われたことがほとんど記憶に残らないこともあるかもしれません。このように、何かに集中して、ワーキングメモリーを使っていると、他の情報が入りにくくなったりすることがあります。10人の人の話を同時に聞いたという聖徳太子は、ものすごいワーキングメモリーの持ち主であったのかもしれません。
ワーキングメモリーには、見た情報(視覚的情報)を扱う部分と聞いた情報(聴覚的情報)を扱う部分があると考えられており、使っている脳の領域が異なるということが報告されています。学校での場面を考えた場合、授業を聞いているときは、聴覚的ワーキングメモリーを使って、黒板を書き写すときは、視覚的ワーキングメモリーを使っています。
5歳0ヶ月~16歳11ヶ月のお子さんを対象としたWISCは、改訂を重ねており、2022年に5番目のバージョンとなるWISC-Ⅴが刊行されました。WISC-Ⅴでは、一部の内容が新しくなったことで、これまでよりも視覚的ワーキングメモリーについて詳しく検討することができるようになりました。これまでのWISCでは主に聴覚的ワーキングメモリーが強調されていましたが、WISC-Ⅴの「ワーキングメモリー」は、視覚と聴覚を含めた、全体的なワーキングメモリーをさします。
それぞれの人に、ワーキングメモリーの個性があるといえます。ワーキングメモリーについてより詳しく知りたい方は、以下の参考文献をご参照ください。
参考文献
・湯澤正通・湯澤美紀(著) 『ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援』 学研
・苧阪満里子(著) 『もの忘れの脳科学』 講談社ブルーバックス

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